佐々木裕介【フットボール求道人が行く】

 実に幸せな時間だった。取材で訪れたスタジアムで数多くの“日本”を感じられたのだから。何を言ってんだ? と言われかねない序章だが、微笑みの国のタイ王国で行われたタイリーグ1(タイ1部)の今季開幕戦での話になる。

 Jリーグがメディア向けに開くキックオフカンファレンスが東京で行われた日(2月14日)、筆者はタイ・バンコクに居た。Jよりもひと足早く迎えるタイリーグ開幕と日程が被ったことは、以前から分かっていた。

 どちらへ行こうか、天秤に掛けたことも事実。奇しくもバレンタインデーとも被り、チョコをもらえるアテなんてこれっぽっちもないのに東京居残りを悩んだのも事実。

 しかし、開幕カードが日本人監督対決という響きの方が勝り、タイへ飛ぶことを決断することになる。

 首都・バンコクの中心地から南東へ約40キロ。タクシーで正味1時間の距離にあるサムットプラカーン県のスタジアムが今回の舞台だ。

 金曜夜8時開始の“金T”開幕マッチ。家路を急ぐ帰宅ラッシュ渋滞にはまり、実際の距離よりも凄く遠く感じた。

 スタジアムへ到着したのがキックオフ1時間半前。まずは場外を歩いてみた。新シーズンの始まりを心待ちにしていたファンの熱気は万国共通。熱気で満ち溢れている。

 するとほとんどのファンが、ブルーやオレンジ色のアイスキャンディーを頬張っていることに気が付く。バンコクは乾季。そこまで蒸さず、熱くない時期なのだが、何故に皆がこんなにも? と不思議に思ったのも束の間。目の前のアイスキャンディーを配るブースに、ファンが群がる光景が飛び込んできた。

 日本で絶大な市民権を得ている「ガリガリ君」だ。スタッフは次々に箱を開けて配ってはいるのだが、需要に追い付かずに待ちの列が出来ている。お味は定番・ソーダ味とみかん味の2種類。幼少期からの大好物がこれでもか、と配られている嬉しい現実に、味見と称して両方をいただいてみた。どちらも味は承知しているくせに。

2020-02-19 (1)


「2016年に弊社初となる海外法人をタイに設立。現在はコンビニ等の小売店舗様でガリガリ君を販売いただいています。また2017年12月には、北海道コンサドーレ札幌さんとアジアプロモーションパートナーを締結させていただき、タイ国内でのプロモーション広告塔にはチャナティップ選手を起用させていただいたりもしています。そんなサッカーとのご縁もあって、昨季よりサムットプラカーンシティ様ともお付き合いさせていただいているんです」

 販売開始から4年。やっとタイでも少し少しずつ認知され始めた、とはスタッフ談。年間を通して温暖なタイ。タイ人もアイスキャンディーが大好きなのである。

 ブースの前で“FREE”と書かれた看板を持ち、可愛い瞳で微笑んでくれたタイガールを見て、“何がFREE”なのか? 下品な想像をしてしまったことに恥ずかしさを憶えたが、とにもかくにも到着早々に感じた“日本”であった。

 ふたつ目のガリガリ君を食べ歩きしていたところを、白人家族に呼び止められた。筆者を見て、すぐに日本人だと分かったからだという。

「俺はイングランド・シェフィールド出身、仕事の関係でタイへ来て3年目。近所に住んでいる縁でサムットプラカーンシティを応援しているんだ。前線のふたりが移籍してしまったことが心配だけどね。昨年のムラヤマ(村山哲也/前サムットプラカーン監督)は良かったが、新しい日本人監督にも期待しているよ」

 どこから来たのか聞かれ、東京からやって来たことを告げると、今度は好きなクラブはあるのかと聞き返される。

 間違いなく知らないだろうとは思ったが「東京ヴェルディが心のクラブだ」と一応答えてみたらさあ~大変。「今は2部だけど一時代を築いた古豪だな」というリプライに全身が痺れた。極東国の蹴球事情までも抑えているあたり、さすがはフットボールの母国出身者だなと感心する。

■両チームのコーチも日本人

 そしてこの日、私の気持ちをここへと向かわせたのが、開幕カードのサムットプラカーンシティFC(以下、サムットプラカーン)―チェンライ・ユナイテッド(以下、チェンライU)戦の日本人監督対決だ。

 サムットプラカーンは2016年Jリーグ最優秀監督賞ホルダーである石井正忠(元鹿島アントラーズ監督)
石井


チェンライUはタイ歴が長く地元サッカーに精通した滝雅美(元タイ・ホンダFC監督)、今季ふたりの日本人指導者が就任したことで実現した。

チェン頼


 試合前、視察に訪れた西野朗・タイ代表監督と石井監督の談笑する光景を目にして一瞬、ここがタイであることを忘れてしまう程の錯覚を覚えた。 やっぱりここへ来て良かったんだ、と感じた瞬間、日本人ジャーナリスト冥利に尽きる思いがわいた。

 試合は1ー1の痛み分けだった。開始早々にサムットプラカーンが先制して前半を折り返すが、後半、前年覇者であるチェンライUがチャンピオンの意地を見せて追い付いた。

 実は、まだ“日本”を感じられることは尽きない。サムットプラカーンにはふたりの元Jリーガー選手(小野悠斗と坂井達弥/共に今季新加入)がプレーし、石井監督を支えるコーチも日本人(加藤光男)。またチェンライUのアシスタントコーチも日本人(樋口大輝)なのだ。もうここまでくると、ここがどこなのか良く分からなくなってくる。

 今、タイサッカー界にはニッポンムーブメントが到来している。

 街の至るところでチャナティップ(札幌)が微笑む広告を目にするし、北海道コンサドーレ札幌や横浜F・マリノスのユニフォームを着るファンを見掛けることも珍しくはなくなった。

 また西野朗が動けば直ぐにニュースになる。

 まさにタイと日本のサッカーの強いかかわりを感じられる日々だ。

 いやはや、凄い時代が来たものである。=文中敬称略

(佐々木裕介/フットボールツーリズム アドバイザー)



タイサッカー界にニッポンムーブメント到来 日本人監督対決も実現 タイサッカー界にニッポンムーブメント到来 日本人監督対決も実現
…言ってんだ? と言われかねない序章だが、微笑みの国のタイ王国で行われたタイリーグ1(タイ1部)の今季開幕戦での話になる。 Jリーグがメディア向けに開く…
(出典:サッカー(日刊ゲンダイDIGITAL))









みよT
@Yu_197708

ACLでプロデビューを飾ったFC東京・紺野和也…「実際にプレーしてすごく楽しかった」 https://t.co/pbliWeDcCkAリーグを見ていて、チャナティップがタイでプレーしていた時に彼らはチャナティップを全然止められ… https://t.co/PAIePq8L6i

2020-02-18 23:24:39

(出典 @Yu_197708)